「イラクの戦場で学んだこと」(岸谷美穂)①

いいものです、若い人が頑張っているのは。

「イラクの戦場で学んだこと」
(岸谷美穂)岩波新書

いいものです。
若い人が頑張っている記録を読むと、
本当に元気が出てきます。
著者岸谷美穂さんは私より9歳も若く、
この本自体も
今から11年前に出版されたもの。
つまり彼女が20代の頃の
奮闘記録なのです。
若い女性がイラクの紛争地域で
現地スタッフの先頭に立って
難民救援活動に奔走する。
ここには学ぶべき点が多々あります。

一つは彼女の決断力です。
大学を卒業した若い人が、
安定とは言えないNGOへ就職する。
そして最初の就職先が
国内勤務であることから、
現地派遣のある職場へと転職する。
彼女は「安定」など
最初から考えていないのでしょう。
自分のやりたいことを実現するために
大きな決断する。
学びたいと思います。

一つは彼女の行動力です。
生命の危険のある地域での
支援活動です。
治安も悪ければ衛生環境も悪い。
若い女性が、そのような地域に
自らの意思で赴いたのです。
そこでむかえたイラク開戦。
決して逃げることなく、
彼女は現地にとどまり活動します。
それは決して
向こう見ずな勇気ではありません。
恐怖と戦いながら、
それに打ち勝っての行動なのです。
大いに学びたいと思います。

一つは彼女のマネジメント力です。
赴任して数ヵ月後、
上司が異動することになり、
彼女は現地スタッフ110名の
責任者になります。
経験に乏しく、
言葉も十分には通じないであろう中での
リーダーシップ。
それもクルド人は
プライドが非常に高く、
男性上位主義の社会規範を有する民族。
その現地人スタッフを束ねて
組織として活動していくのですから、
苦労は並大抵のことではありません。
ぜひ本書をお読みください。

そして最も大きなものは
彼女の信念なのです。
人道支援はなぜやるのかという
理念がなければできないと
彼女は言います。
「政治闘争に巻き込まれ、利用され、
支援対象者から罵倒され、
事務所では孤独に事務処理を行い、
時には保身のための
駆け引きや政治的取引も必要」なのです。
だからこそ、
自分のやろうとしていることが
自らの信念と合致するものかどうか、
絶えず検証する必要があるのでしょう。

ぜひ若い人たち、それも
中学生に読んで欲しいと思います。
「自分探し」に明け暮れ、
何も為さないまま漫然と
会社探しをする大学生になる前に。

※いつも思います。自分が若いとき、
 こうした本に出会うことが
 できていれば良かったと
 (出会っていて何かが
 変わっていたかどうかは
 怪しいのですが)。

(2019.9.5)

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